【AIデータセンターと電力システム改革⑯】MISOは大規模需要にどう対応するのか―LARSと発電接続キュー改革(第41回)

データセンターと電力システム

エネルギー政策研究所長 山家公雄

はじめに:急展開するMISOのシステム改革、前回からの進展

米国中西部を中心に電力系統を運営するMISO(Midcontinent Independent System Operator)では、AIデータセンターなどの大規模需要の急増に対応するため、複数の制度整備が進んでいる。

本シリーズ第36回では、MISOがFERC(連邦エネルギー規制委員会)に申請した、需要近傍の発電設備を迅速に接続するZGIA(Zero-Injection Generator Interconnection Agreement)と、大規模需要そのものに信頼度要件を課すLLIRR(Large Load Interconnection Reliability Requirements)を中心に解説した(MISO、大規模需要に対応する新制度へ|AIデータセンターと電力システム | エネルギー戦略)。

その後、需要と関連発電を並行して審査するLARS(Large Load Addition Resource Study)の提案に加え、従来から積み上がってきた発電設備の系統接続キューを正常化・迅速化する改革も具体化している。

これらは、それぞれ別の問題に対応する制度であり、一つの手続きに統合されているわけではない。しかし、全体として見ると、大規模需要を系統に接続するだけでなく、需要を支える電源の確保、既存の発電接続案件の処理、送電網の整備、系統の信頼度、費用負担をどう整合させるかという共通の課題に向き合っている。

今回は、既存の発電接続キュー改革とLARSを取り上げ、前回解説したZGIA・LLIRRなどとの関係を整理しながら、MISOの制度改革の全体像を考える。

1.大規模需要と、それを支える発電設備の接続に関する制度改革

MISOでは、AIデータセンターなどの大規模需要の増加を受け、発電設備と需要家を系統に接続するための制度改革が進んでいる(図1)。

図1.MISO管轄エリア

(出所)MISO:HP

注目されるのは、大規模需要と関連発電を一体的に審査する新たな仕組み「LARS(Large Load Addition Resource Study)」である。MISOは2026年10月2日、LARSの導入に向けた料金規程の改定をFERC(連邦エネルギー規制委員会)に申請した。200MW以上の大規模需要と、それに関連する発電設備を対象に、審査期間を原則120日とする構想である(MISO proposes fast-track large load, generation study process | Utility Dive)。

しかし、MISOの改革はLARSだけではない。9月21日には、従来から滞留している発電設備の接続キューを迅速化する提案をFERCに申請している。DPP-2022の接続キューには、約71GWの発電プロジェクトが含まれ、現行のままでは少なくとも18か月の遅延が生じる可能性があるとMISOは説明している(States, renewable developers back MISO’s accelerated interconnection queue plan | Utility Dive)。

この二つは、同じ問題への同じ対策ではない。既存キューの改革は、過去に申請された発電案件の審査を正常化する取り組みである。一方、LARSは、大規模需要と関連発電を組み合わせ、新しい接続案件を審査するための仕組みである。

両者を合わせて見ることで、MISOが直面している課題が明確になる。すなわち、既存の接続手続きの滞留を解消すると同時に、急増する新たな需要を、供給力と送電網の整備に整合させながら受け入れなければならないのである。

2.既存発電接続キューの迅速化――再審査の連鎖をどう断つか

MISOは、発電設備の連系審査をDPP(Definitive Planning Phase)という段階的なプロセスで実施している。ところが、審査の後半でプロジェクトが撤退すると、残った案件について再審査が必要となり、ほかの案件の処理も遅れるという問題が生じてきた。

MISOによれば、現行ルールでは、実現可能性が低下したプロジェクトであっても、撤退に伴うペナルティを避けるため、審査にとどまる誘因がある。その結果、後半段階での撤退が再審査を引き起こし、キュー全体の処理を遅らせることになる。

FERCへ提出された迅速化案は、この問題への対応を目的としている。主な内容は次の通りである。

  • DPP-2022の案件について、所定の意思決定段階に入る前の撤退を、ペナルティなしで認める。
  • 審査後半において、ネットワーク増強費用の増加を理由にペナルティなしで撤退できる基準を、現行の35%から50%へ引き上げる。
  • すべての連系審査サイクルについて、最終審査段階の再審査を1回までに制限する。

MISOは、これらの措置によって既存キューの滞留を解消し、連系費用の見通しを改善するとともに、審査の長期化を防ぐことを目指している。

州の公益事業規制当局を代表するMISO管轄州機関協議会(Organization of MISO States:OMS)や、再生可能エネルギー開発事業者などからは支持が示された。一方、独立系発電事業者Pathway Powerは、撤退した案件の影響による費用再配分のリスクが、キューに残る事業者に移されると懸念を表明した。

ここには、審査を速めるだけでは解決できない問題がある。既存案件の撤退によってネットワーク増強費用の負担配分が変わる場合、キューに残る事業者の負担が増える可能性がある。迅速化と費用負担の公平性をどう両立させるかは、引き続き重要な課題である。

なお、約71GWという数字は、建設が確定した発電容量ではなく、対象となる審査プロセスに含まれるプロジェクトの規模を示す。今回の改革は、この容量を一括して白紙に戻すものではなく、撤退と再審査のルールを見直し、既存案件の処理を前に進めるためのものである。

MISOは2026年9月21日、既存キューの迅速化案をFERCに申請した。DPP-2022案件のペナルティなしの撤退については10月20日を期限として提案されていた。したがって、10月24日時点では、申請内容だけでなく、FERCの判断状況と、期限に関する措置が実際にどのように適用されたかを確認する必要がある。

3.LARS――大規模需要と関連発電を一体的に審査する

既存キューの迅速化が過去の案件を対象とするのに対し、LARSは、大規模需要の増加に対応するための新たな審査ルートである。

従来、発電設備と大規模需要の接続は、関連する審査や手続きを順番に進める必要があり、需要側と発電側の計画がかみ合わず、全体の接続が遅れる可能性があった。LARSは、需要と関連発電を組み合わせて審査することで、系統への影響を一体的に評価し、必要なネットワーク増強をより合理的に検討することを目指している。

MISOの提案では、対象となる需要は200MW以上で、関連発電は同じローカル・リソース・ゾーン(LRZ)内にあることが条件となる。また、申請受付や需要・発電の組み合わせなど、提案された手続き上の要件を満たす必要がある。

ただし、LARSの制度設計をめぐっては、需要と発電の「近接性」が重要な論点となっている。FERCが問題提起したのは、需要と発電が電気的に近接し、両者を組み合わせることで系統への影響を抑えられるケースの接続迅速化である。MISO案は、両者が同じLRZ内にあることを基準としているが、同一LRZ内であっても、電気的に近接しているとは限らない。

これに対し、州の消費者保護関係者や一部の業界団体からは、LRZという地理的な区分だけでは電気的な近接性を十分に担保できず、系統混雑や送電費用の負担配分に問題が生じる可能性があるとの懸念が示されている。したがって、LARSが需要と発電の一体審査を実現する制度であることと、FERCが問題提起した電気的近接性の要件に十分応えることができるかは、分けて評価する必要がある。

審査期間は原則120日とされるが、これは接続工事まで含む期間ではなく、制度上の審査期間である。

また、LARSは申請した時点で接続や発電設備の系統への送電が保証される制度ではない。例えば、需要が実現しなくなった場合、関連発電は通常の接続キューを通じて系統への連系サービスを確保する必要があるとMISOは説明している。このため、需要と発電の一体的な審査を、系統への注入権を自動的に付与する仕組みと理解してはならない。

LARSは2026年10月2日にFERCへ申請された段階にある。MISOは同年12月2日の発効を求め、2027年第1四半期の初回審査受付を想定している。ただし、いずれも申請段階の予定であり、FERCの判断と実際の実施時期は区別する必要がある。

ZGIA・LLIRR・LARSは、何が違うのか

前回解説したZGIAとLLIRRは、大規模需要に対応するという点では共通するが、対象とする問題は異なる(MISO、大規模需要に対応する新制度へ|AIデータセンターと電力システム | エネルギー戦略)。

ZGIAは、大規模需要の近くに配置した発電設備について、広域系統への電力注入を行わないことを前提に、接続審査を簡素化する仕組みである。一方、LLIRRは、大規模需要の電力使用状況や急激な変化、系統事故時の挙動などを把握し、需要側にも信頼度上の要件を求める仕組みである。

これに対して、今回取り上げるLARSは、大規模需要と、それに関連する発電設備を並行して審査することを目指す仕組みだ。したがって、ZGIAが接続形態、LLIRRが需要側の信頼度、LARSが需要と関連発電の審査方法に重点を置くと整理できる。

さらに、これらとは別に、従来から審査を進めてきた発電設備の接続キューそのものを正常化する改革も進んでいる。

つまり、MISOでは「新しい大規模需要をどう受け入れるか」と「従来からの発電接続案件をどう処理するか」という二つの課題に、並行して対応しようとしている。

4.ZGIA・ERAS・LLPR――異なる接続課題に対応する制度

前節では、LARSをZGIA・LLIRRと比較した。ここでは、ERASやLLPRも含め、MISOが検討する接続制度を、対象となる課題の違いから整理する。重要なのは、これらをすべて同じ「迅速接続制度」として扱わないことである。

ZGIAは、大規模需要と同じ接続地点などに置かれた発電設備について、広域系統への電力注入を行わないことを前提に、同じ地点の需要に電力を供給する形で接続を扱う仕組みである。発電設備が系統へ電力を注入する権利を一般的に与えるものではない。

したがって、需要家の構内などで発電設備を利用するケースには関係し得るが、発電余剰を系統へ供給する計画を、そのままZGIAで実現できるとは限らない。接続地点、運用方法、広域系統への電力注入を行わない構成、系統増強の必要性などを確認する必要がある。

ERAS(Expedited Resource Addition Study)は、緊急性の高い供給力・信頼度上のニーズに対応するため、発電設備の連系審査を迅速化する制度であり、既に運用されている。これに対し、LARSは大規模需要と関連発電を組み合わせて審査する新たな仕組みとして提案されている。

このほか、MISOでは、大規模需要の信頼性・運用要件を定めるLLIRR(Large Load Interconnection Reliability Requirements)や、大規模需要の接続審査に関するLLPR(Large Load Project Review)などについても、制度の整備・具体化が進められている。これらは、発電設備をどのように接続するかだけでなく、大規模需要が系統に与える影響を把握し、安定運用を確保するための仕組みである。

5.送電網の計画・増強との整合性

発電設備と需要を迅速に接続する制度を整えても、送電網に容量がなければ、必要な電力を確実に供給できるとは限らない。

MISOでは、通常の広域送電計画であるMTEP(MISO Transmission Expansion Plan)に加え、緊急性の高い送電プロジェクトを通常の計画サイクル外で検討するEPR(Expedited Project Review)も活用してきた。大規模需要の接続審査についても、系統への影響、必要な増強、費用負担を広域的な計画と整合させることが重要になる。

また、需要・発電の組み合わせを迅速に審査する場合でも、系統モデルや想定条件が既存キューの案件と整合していなければ、系統容量を二重に見込んだり、既存案件の費用負担を変えたりするリスクが生じる。

したがって、個別案件の審査期間を短縮することと、広域系統の容量や増強費用を適切に配分することは、分けて考えなければならない。

6.MISOの改革をどう捉えるか

以上を整理したのが表1であり、MISOが進める制度改革の全体像を示している。

表1.MISOが進める制度改革の全体像

(出所)MISO、FERC等の情報を基に筆者作成

MISOの大規模需要対応は、少なくとも次の複数の課題から構成される。

第一に、既存の発電接続キューを正常化し、撤退と再審査の連鎖による遅延を減らすこと。第二に、ERASなど、発電設備の連系審査を迅速化する仕組みを整備すること。第三に、LARSによって大規模需要と関連発電を組み合わせて審査すること。第四に、ZGIAなどを通じて、需要と同じ地点に置かれる発電設備の接続形態を整理すること。第五に、大規模需要の信頼性・運用要件と送電網の計画・増強を整合させることである。

これらは、、それぞれ異なる課題に対応する制度だが、全体としては相互に関連している。ただし、制度ごとに適用条件、手続き、承認状況が異なり、すべての案件が自由に制度を選択・併用できるわけではない。

とりわけ重要なのは、既存キューの改革とLARSなどの新しい接続ルートとの関係である。新たな大規模需要を迅速に接続するための仕組みを整えても、既存の発電案件の審査が滞り、送電容量や費用負担の扱いが不透明なままでは、電源投資と需要開発を全体として円滑に進めることは難しい。

MISOの改革は、AIデータセンターなどの需要急増に対応するため、既存制度の正常化と新しい接続ルートの整備を同時に進める試みである。今後の焦点は、各制度が個別に迅速化を実現できるかだけでなく、需要、発電、送電網の計画と費用負担を、どこまで一貫した仕組みとして運用できるかにある。

※『AIデータセンターが招く米国電力改革』シリーズ(MISO関連)のブログ

▼MISO、大規模需要に対応する新制度へ|AIデータセンターと電力システム | エネルギー戦略

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