【AIデータセンターが招く米国電力改革⑨】SPPが「発電接続」を根本から変える/CPP、送電計画と系統接続を一体化(第33回)

データセンターと電力システム

エネルギ-政策研究所長 山家公雄

序:行き詰まる系統計画に光明が差す

AIデータセンターの急増で、米国の電力網では「発電所を造ること」だけでなく、「その発電所をいつ、どこに、いくらで系統接続できるのか」が大きな問題になっている。これまで米国の多くの地域では、送電網の長期計画と発電設備の系統接続審査が別々に行われてきた。

送電網は「将来の需要」を予測して計画する。一方、発電事業者は個別に系統接続を申請し、その発電所を接続するために必要な送電網増強はその後調査が行われる。この「二つの制度が別々に動く」ことが、系統接続キュー(順番)の長期化、再調査、コストの不確実性、そして大量の申請取り下げを生んできた。

SPPが提案した「送電計画と系統接続の統合」をFERCが高く評価

この問題に対して、米国の地域送電機関(RTO)であるSouthwest Power Pool(SPP)が、大胆な制度改革に踏み切った。それが、Consolidated Planning Process(CPP:統合計画プロセス)である。CPPは単なる「系統接続審査の迅速化」ではない。送電計画と発電設備の系統接続を、一つの計画プロセスに統合する制度改革である。

2025年8月にSPP理事会が承認し、2026年3月13日にFERCが承認した。FERCの複数の委員は、他のRTO/ISOにも同様の改革を検討するよう促している。ロズナー委員は「SPPのステークホルダーが全会一致で承認したこの提案は、オープンアクセス送電サービスが始まって以来、最も革新的で常識にかなったものである」と評している。AIデータセンターによって電力需要が急増する米国では、「発電所を系統につなぐ制度」そのものが変わり始めている。

図1は、FERCのロズナー委員が、現状の標準的な系統計画プロセスとCPPについて比較・整理したものである。従来3~6年かかることもあった系統接続を、CPPでは申請窓口の締切から9~10カ月程度で接続契約に至ることを目指している。

図1.系統計画の比較:現状の標準 vs CPP

(出所)FERCのRosner委員提出資料(2026年3月13日) 、赤線は筆者追記

統合計画プロセス「CPP」とは何か

なぜSPPはCPPを導入したのか

SPPは米国中部を中心に電力市場と送電網を運営するRTOで、14州にまたがる広大な地域をカバーしてきた(2026年4月1日以降は17州に拡大)。

これまでSPPでは、①送電計画②発電設備の系統接続を基本的に別々のプロセスで処理していた。送電計画では、将来の需要を予測し、「10年、20年後にどの地域で送電網が必要になるか」を考える。一方、発電事業者が系統接続を申し込むと、「この発電所を接続するためには、どの送電線を増強する必要があるか」を個別に調査する。一見すると合理的に見える。しかし、ここには大きな問題があった。


「発電所が来てから送電網を考える」という限界

従来の仕組みでは、発電事業者が系統接続を申請して初めて、その発電所が必要とする送電網増強を詳しく調べる。ところが、発電プロジェクトは途中で撤退する。すると、最初の発電所を前提に計画していた送電網の必要性も変わる。そこで再調査が必要になる。さらに別の発電所が撤退すれば、また再調査する。

こうして、「申請→系統調査→高額な増強費用→事業者が撤退→再調査→別の発電所が撤退→再調査」という循環が生まれる。FERCのRosner委員によれば、米国では70%を超える発電設備が系統接続キューから脱落している。その結果、接続審査やコスト見積もりが古くなり、3~6年にわたって調査が繰り返されることがある。CPPでは、これを申請窓口の締切から9~10カ月程度で接続契約に至るプロセスへと短縮する。

つまり問題は単純な「審査能力不足」ではない。送電網を計画する順番そのものに問題がある。FERCが承認した2026年3月時点では、発電設備の接続待ちは105GWとなっていた。CPP案はSPPの属する全州が賛成した


CPPは「Build First」から「Plan First」へ

ここがCPPの最大のポイントである。従来型の制度は、「発電設備の接続申請を受けてから、必要となる送電網増強を個別に調査する」といういわば「Build First」型だった。CPPはこれを逆転させる。「将来の需要と発電を予測する→必要な送電網を先に計画する→発電設備を接続しやすい場所を示す→そこに発電所を誘導する」という「Plan First」型である。

FERCのRosner委員は、この違いを明確に説明している。CPPでは、20年間の需要と発電の将来像を一体的に見通し、それを満たすための送電網を先に計画する。つまり、「発電所がどこに来るか分からないから送電網を造れない」という従来の考え方から、「将来必要になる発電と需要を予測して、先に送電網を用意する」という考え方への転換である。


CPPの核心――送電計画と系統接続を一つにする

承認されたCPPの下では、SPPは従来、別々に行っていた「送電計画」と「発電設備の系統接続」のプロセスを統合し、3年ごとに繰り返す一つの計画サイクルに置き換える。その中心となるのが、20年間を見通した長期的な送電網計画である「CPP-20」である。そして、各年に行われる10年間の評価「CPP-10」により、短期的な系統接続ニーズにも対応する。

SPPはこの計画を通じて、将来の送電容量を確保できる場所をあらかじめ特定する。それが、

PIL(Planned Interconnection Location:計画系統接続地点)である。

PIL―「ここならつなぎやすい」という場所を先に示す

PILはCPPを理解するうえで最も重要なキーワードの一つである。簡単に言えば、「この場所なら、既存または計画中の送電容量を利用して発電設備を接続しやすい」という地点である。

従来なら、発電事業者が土地を取得し、系統接続を申請してから、「この場所では送電網が足りません」と判明する可能性があった。CPPでは、それを逆にする。SPPが長期的な系統計画を行い、「ここには将来、発電設備を接続できる」という場所を先に示す。

これによって、発電事業者は土地取得やプロジェクト開発の段階から、系統接続の可能性を考慮できる。つまりPILは、単なる「空き容量」ではない。送電網の長期計画と発電設備の立地を結びつけるシグナルなのである。


もう一つの核心―GRID-C

PILとセットになるのが、GRID-C(Generalized Rates for Interconnection Development Contribution)である。これは、発電設備が系統接続する際に支払う1MW当たりの標準化された前払い負担金である。

従来の大きな問題は、「最終的にいくら払うことになるのか分からない」ことだった。系統接続審査を進めていくと、必要な送電網増強が次々と判明する。そして数年後になって、「想定していたよりもはるかに高額な増強費用が必要です」となる可能性がある。これは発電プロジェクトの資金調達にとって非常に大きなリスクになる。


「いくらかかるか分からない」を「最初に分かる」に変える

CPPでは、この問題をGRID-Cで解決しようとする。SPPは長期的なCPP-20の分析に基づいて、「この地域で発電設備を接続する場合、標準的にこれだけ負担してもらう」というGRID-Cを設定する。そして、系統接続申請を受け付ける前にGRID-Cを公表する。

FERCのRosner委員が特に評価したのも、この点である。発電事業者が系統接続キューに入る前に、接続費用を知ることができる。これによって、「系統接続費用が不明→資金調達できない→プロジェクト撤退」という従来の問題を減らそうとしている。


ただし「GRID-C=安い」ではない

ここは重要なポイントである。GRID-Cは、必ずしも従来の系統接続費用より安くなるわけではない。むしろ、プロジェクトによっては高くなる可能性がある。なぜならGRID-Cは、個別プロジェクトだけのための増強費用をそのまま請求するのではなく、長期的な系統計画に基づいて発電事業者の負担分を標準化したものだからである。つまりCPPは、安くする制度というより、「後から大幅に増えるかもしれない費用」を「最初から分かる費用」に変える制度と理解した方が正確である。

ここには明確なトレードオフがある。従来は「費用は低く見える→しかし後から増える可能性→事業リスクが大きい」となる傾向が強い。一方、CPPは「費用は場合によっては高い→しかし最初から分かる→事業性を判断しやすい」ということになる。


PILから外れるとどうなるか

もちろん、すべての発電事業者がPILに接続する必要はない。PIL以外の地点、つまりPILに指定されていない地点(UPIL:Unplanned Interconnection Location)を選択することもできる。ただし、その場合は、「GRID-C+プロジェクトに直接割り当てられる送電網増強費用」を負担する。

したがって、PILは「計画された地点→標準化されたGRID-C→費用の予見可能性が高い」となるが、UPILは「計画外の地点→ GRID-C+直接割当増強費用→ 柔軟性はあるがコストリスクが高い」という構造になる。

これは発電事業者に対して、「自由に好きな場所へ接続する」のではなく、「送電網が整備される場所へ立地する」というインセンティブを与える仕組みでもある。


CPPによって「系統接続の主導権」が変わる

従来は、発電事業者が、「この場所に発電所を造りたい」と先に決める。そして、SPPが、「そこにつなぐには何が必要か」を調べていた。CPPでは、SPPが長期的な送電網計画を先に示す。そのうえで、発電事業者がその計画に合わせて立地を選ぶ。つまり、Developer-drivenだった系統接続を、Grid-planning-drivenの方向へ転換する制度とも言える。

この意味でCPPは、単なる「キュー改革」ではない。発電所の立地と送電網整備の関係そのものを変える制度改革なのである。

CPPとAIデータセンター:発電・需要・送電を一体で考える

AIデータセンターとの関係

では、なぜこのCPPが「AIデータセンターと電力システム」のシリーズで重要なのか。答えは、発電と需要を別々に考えないことにある。

AIデータセンターは、従来の需要増加とは異なる特徴を持つ。数MW、数十MWではなく、場合によっては数百MW、GW級の需要が、一つの地域に集中して発生する。そのため、「データセンター計画→大規模な電力需要→発電設備の追加→送電網の増強」を別々に考えることが難しくなっている。CPPはまさに、この問題に対応する方向を向いている。

SPPの長期計画では、データセンターなどの大規模負荷を含む将来の需要を想定し、その需要と将来の発電を一つの送電網の中で考える。つまり、Load(需要)Generation(発電)Transmission(送電)を一体として計画する。ここがCPPの本質である。


HILL・HILLGAとCPPはどうつながるのか

ここで、これまで本シリーズで取り上げてきたSPPのHILLとCPPの関係を整理しておきたい(【AIデータセンターが招く米国電力システム変革・その4】SPPが始めたAIデータセンター接続の新ルール | エネルギー戦略)。

SPPには現在、大きく異なる二つのアプローチが存在する。

① HILL/HILLGA

これは、「今、急いで大規模負荷を接続するにはどうするか」という問題への対応である。

HILL(High Impact Large Load)では、50MW以上(低電圧では10MW以上)の大規模商業・産業負荷を特別に審査する。HILLGA(High Impact Large Load Generation Assessment)では、その大規模負荷の近傍に新しい発電設備を配置し、LLRIS(Load Limited Resource Interconnection Service)によって負荷への供給に限定した迅速な接続を可能にする。HILLGAの審査期間は約150日とされている。ただし、LLRISは恒久的な接続ではない。発電設備の商業運転開始から5年でHILLGA契約が自動終了し、それ以降も接続を続けるには通常の系統接続プロセスに入る必要がある。大規模需要者は、HILLGA申請とほぼ同時にCPPにも申請を出すことが想定される。

② CPP

こちらは、「これからの発電・需要・送電網をどう計画するか」という、より根本的な問題への対応である。したがって、HILL/HILLGA=短期・迅速対応、CPP=中長期・恒久的な系統設計と考えると分かりやすい。

CPPは申請窓口の締切から9~10カ月程度、HILLGAは150日程度と、HILLGAの方が短期接続に特化している。

SPPは「二つの速度」の系統接続制度を持つ

この点は、SPPの制度改革を理解するうえで非常に興味深い。

現在のSPPでは、HILLGA+LLRISは高速道路であり、大規模負荷の近くに発電設備を置き、短期間で接続する。ただし、その接続権は商業運転開始後5年間という期限付きである。一方、CPPは本線であり、PIL、GRID-Cを利用しながら、長期的・恒久的な系統接続を行う。

つまり、HILLGAは「急いでつなぐための特急ルート」、CPPは「長期的な系統接続を計画する本線」と見ることができる。この二つを混同すると、SPPの制度全体が分かりにくくなる。

CPPが系統計画・接続に及ぼす影響

CPPが変える「系統接続」の考え方

ここまで見てきたように、SPPのCPPは、単に発電所を系統につなぐための手続きを短縮する制度ではない。従来は、「発電所の申込みを受けてから、必要な系統増強を調べる」という順序だった。CPPではこれを逆転させ、「将来の需要と発電を見通して、先に系統を計画し、その上で発電所を接続する」

この転換によって、開発者にとって重要になるのは、申込み後の「キューをどう生き残るか」ではなく、申込み前に「どこに、どの規模で、どのコストで接続するか」を判断することになる。PILとGRID-Cは、そのための仕組みである。PILは「どこにつなぐか」、GRID-Cは「いくら負担するか」を、従来より早い段階で明確にする。

つまりCPPは、「接続待ちの制度」から「計画に基づいて接続する制度」への転換と捉えることができる。

これは、AIデータセンターなどによって電力需要そのものが急速に変化する現在、発電所だけを個別に審査する従来型の接続制度では対応しにくくなっていることへの、SPPなりの答えでもある。

「AI時代の系統接続制度」はどこへ向かうのか

AIデータセンターなどによって電力需要の増加が加速するなか、「需要を予測して発電所を建設し、送電網を整備する」という従来の制度だけでは対応が難しくなっている。だからこそSPPは、「需要、発電、送電を一体として考える」CPPを導入した。

そして、その上に、HILL/HILLGAという大規模負荷向けの高速接続制度を重ねている。表1は、SPPの新しい系統計画制度の概要を示したものである。

表1.SPPの新・系統計画制度の概要

 (出所)SPPのCPP、HILL制度を基に筆者作成

この構造を見ると、SPPが単に「系統接続を速くする」のではなく、電力網そのものの計画方法を変えようとしていることが分かる。

おわりに――SPPのCPPは「キュー改革」ではなく「系統計画改革」である

SPPのCPPを、「系統接続を10カ月程度に短縮する制度」とだけ説明すると、その本質を見失う。CPPの本質は、「発電所が来てから送電網を考える」のではなく、「将来の需要と発電を予測して送電網を先に計画する」ことにある。

そして、PILによって発電設備の立地を送電網計画に誘導し、GRID-Cによって系統接続コストを事前に見える化する。さらに、HILL/HILLGAによって、AIデータセンターなどの大規模負荷については、短期的な接続ニーズにも対応する。

つまりSPPの改革は、「つなぐ順番」を変えたのである。これまでの、「発電所 → 接続申請 → 系統調査 → 送電網増強」から、「需要・発電予測 → 送電網計画 → PIL → 発電所立地 → 接続」へと。

AIデータセンターによる電力需要急増は、米国の電力網に「もっと発電所を造れ」という問題を突きつけている。しかし、SPPのCPPが示しているのは、それだけではない。「どこに、どのような送電網を先に造り、どの発電設備をそこへ接続するのか」という、電力システムの計画思想そのものの転換である。

そしてFERCがCPPを高く評価し、他のRTO/ISOにも同様の改革を促していることを考えれば、これはSPPだけの実験で終わらない可能性がある。AI時代の電力インフラ競争は、発電設備の建設競争だけではない。「発電・需要・送電を、どの順番で計画するか」という制度設計の競争にもなっている。

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