エネルギ-政策研究所長 山家公雄
米国でAIデータセンター(AI/DC)の建設が急速に進んでいる。計画は膨大な数に上り発電事業者、系統運用者、市場管理者そして政策担当者に等に大きな緊張を強いている。AIデータセンターは、24/7、超巨大、一地点集中等従来の産業需要とは異なる。ハイパースケーラーが関連コストを負担する動きが出てきている。今回は、それを考察・整理する。
AIデータセンター事業の特徴
まず、AIデータセンター事業の特徴について、解説する。
AIは戦略産業であるが立地が課題
AIは最大の戦略産業であるが、ハイパースケーラー等は急拡大するニーズに対応するべく、学習・推論に欠かせないAIデータセンター(以下、AI/DCと表記)の整備を競っている状況下にある。土地、労働力、冷却用の水そして電力の確保が地元の理解とともに制約となるが、特に電力の供給確保が大問題となっている。AI/DCは膨大な電力を消費するが、送電・パイプライン等のインフラやタービン等の機材不足により需要に追い付かない状況にある。
一方、AI/DCは、単に大規模で電力需要増を引き起こすだけではなく、短期間での建設、集中的な立地そして24/7の持続的な需要といった特徴をもつ。これは場所的、時間的、利用上で従来にない大きな制約となる。
以上から、データセンターの増加は、電力供給力の確保、システムの維持に大きな影響を及ぼし、それに耐えられる場所やシステムであることが、適地の条件となる。
「集中」が必要となる理由と限界
なお、条件の一つである「集中」は、AIサービスを必要とするエリアが好立地ということであるが、通信インフラの制約が背景にある。AI/DCは、通信遅延(レイテンシー)、光ファイバー網、クラウド接続、GPUクラスター相互接続の制約から、特定地域に集中しやすい。
このメリットでバージニア州北部は世界最大のデータセンター集積地となっているが、現状電力不足が大きな制約になっている。「集中」の面では最適ではなくとも、電力が獲得しやすい場所を選択する動きが出てくる。
AI/DCの電力システムへの挑戦
AI/DCの特徴は、従来の電力システムに対する大きな挑戦でもある。従来の負荷は、増加ペースや使われ方が予測可能であり、送配電網や大規模発電建設について導入ペースを合わせることが可能であった。AI/DCの大規模、集中、短期間、24/7使用の特徴は、短期間での膨大な供給力整備を強いることとなり、巨額の投資が必要となる(表1)。
表1.通常負荷 vs AI/DCの比較表

(出所)各種資料を基に作成
「24/7使用」の意味と限界
因みに、「24/7使用」は、常にデータセンターが稼働し続ける、電力を消費し続けることである。「学習・推論」を行うために途切れることは許されないのである。これはピーク時に価格が上がっても需要量は減らない(デマンドレスポンスを想定し難い)ことを意味し、負荷の最大値がほぼそのまま確保すべき供給力となる。通常負荷は価格に反応する。一方、AI/DCは価格反応しにくい。その結果、系統ピークを押し上げる。さらに、容量市場や送電網増強が必要となり、「そのコストを誰が負担するのか」が政治問題となる。
AI/DCの24/7使用を完全に許容すると、ピーク時に市場化価格は上がり使用量が減ることで需給調整されるメカニズムが小さくなる。所要供給力が増え、接続不可あるいは高コスト負担が生じてしまう。学習や冷却はある程度の変動は可能であるとされ、接続を確保するためにデマンドレスポンスへのチャレンジも要求されることとなる。
強まるハイパースケーラーの影響力と責任
AI/DCによる負担に電力システムが耐えられない事態に
従来のルールでは、供給力整備コストは需要全体で負担するのだが、このままではAI/DCのために、一般消費者の電気料金が上がることとなる。これは、既に米国では政治問題となっており、大規模需要家が「原因者責任」を負う方向に動いている。AI/DC問題は、「AI競争」ではなく、「誰が送電網増強費用を払うのか」という公共料金問題へ移行している。AI需要は民間投資である一方、送電網や容量市場は公共インフラとして運営されている。
ハイパースケーラーがコストを負担する仕組みへ
早急にデータセンターが必要なAI事業者は、AIサービスの付加価値が厚いこともあり、「特別負担、特別料金」を受け入れる姿勢を見せ始めている。高いAIサービスの利益率等の収入で、コスト負担増を吸収できる可能性が高いのである。すなわち、データセンター事業者にとり、半導体関連等の機器や電力設備を負担するAI事業者と契約できるか、が事業性を確保するうえで必須条件となる。これができれば、データセンター事業の回収が見込まれ、構成要素である電力コスト、電力事業も成立する見通しが立つこととなる。
電源開発はAI/DC利用者が判断する時代に
すなわち、従来の電力事業のルールでは、AI/DCの導入は電源開発、インフラ整備、それを支える規制、地元の理解等課題の多い、リスクの高い事業となる。しかし、データセンターの利用者(テナント)の進出が確認されれば、サプライチェーンやエネルギー供給を含め、全体の姿が見えてくるのである。その意味では、「個々の課題を巨大テックの集結による大きな枠組みで解くモデル」が登場した、といえる。
AI/DCは、従来の電力システムが前提としてきた「緩やかな需要増」「需要家間の公平負担」「価格反応型需要」と整合しにくい。その結果、AI事業者自身が送電網増強や供給力確保に一定の責任を負う方向へ制度変更が進み始めている。AI/DC時代は、「巨大需要をいかに系統へ接続するか」が電力システム最大のテーマになりつつある。
終わりに AI/DCと電力システムの歩み寄り
本稿は、戦略産業の重要インフラであるAIデータセンターの整備について、電力供給力整備に焦点を当てて解説した。大規模、迅速、集中、24/7利用という従来にない特徴があり、これに対応するには、従来の電力システムを変える必要があるが、公平性・透明性等の公共サービスの根幹を変えることは不可能である。
そこで、ビッグテック等は責任を負担する必要が出てくるが、事業全体を大規模化・ハブ化し、共同で負担する仕組みが必要になる。大規模電源開発は、ハイパースケーラーを大規模に集約できるかが成否を左右すると考えられるのである。
このような構造変化を象徴する案件として、ソフトバンクグループが主導するオハイオ州AI/DC向け大規模電源構想が注目されている。次回は、この事例を通じて、「AI需要集約型モデル」の意味を考察する。


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