No.9 なぜ再エネ賦課金だけが嫌われるのか/保守のエネルギー観を問い直す

電気料金の評価

エネルギ-政策研究所長 山家公雄

電気料金を巡る議論では、「再エネ賦課金」がしばしば槍玉に挙げられる。一方で、火力発電の燃料費は「燃料費調整費」として一部しか可視化されておらず、その大半は基準料金の中に埋め込まれている。結果として、国民が日常的に目にする負担と、実際に支払っている負担との間には大きな乖離が生じている。本稿では、電気料金の構造を冷静に分解し、「何が高いのか」「何が見えていないのか」を整理する。

電力比率の7割は火力発電で、ガス火力原価の約7割は燃料費

「再エネが電気料金を押し上げている」「国民負担を増やしている」という主張は、保守系論者を中心に繰り返されてきた。しかし、年度により多少の変動はあるが、発電電力量の7割は火力発電で、その多くは燃料費である。主力のガス火力発電の場合は約7割を占める。LNG価格変動がそのまま料金構造全体を左右する。電気料金が高騰し、補助金支給の対象となった主要因は燃料費の高騰にある。以下で、どうして燃料費よりも再エネ賦課金が高く見えるのか、について考察する。

表に出る数字は別建ての再エネ賦課金と燃料調整費

電気料金の内訳を正確に理解することは難しい。最大項目である燃料費に係るデータは公表されておらず、正確に実態を把握することは容易ではない。把握できるのは、再エネ支援に係る費用である再エネ賦課金と燃料費調整費であり、料金表に個別に表示されている。

燃料価格の上げ下げに伴って生じる燃料費の増減分は、「燃料費調整制度」により、計算が可能であり、公表もされている。燃料費調整制度は「過去3ヶ月間の平均燃料価格」を「2ヶ月後の料金」に反映させるものである。実際の算定期間や反映時期は電力会社ごとに若干異なるが、概ね数か月のラグをもって料金に転嫁される仕組みである。しかし、「長期平均を前提として料金原価に組み込まれた燃料費」からの増減・トレンドを示してはいるが、「全体像」は見えない。

以下で、データで確認できる、再エネ賦課金と燃料費(燃料費調整費とそれ以外の燃料費)の推移を試算し、最近の電気料金高騰の要因を探るとともに、電気料金全体に占める位置づけを改めて確認する。

料金高騰、変動の主因は燃料価格

2021年から2023年にかけて、ウクライナ侵攻等を背景に燃料価格が暴騰し電気料金も高騰した(図1)。それを受けて、「激変緩和」対策として2023年1月より補助金が交付され、2024年4月まで続いた。その後、燃料価格は落ちついたが、高い電気料金水準が続いたため「物価対策」として夏季・冬季の需要期をターゲットに断続的に続いている。再エネ賦課金は、支援の性格が違うとして、緊急避難が名目の補助金の対象にはなっていない。

図1.燃料価格の推移(2011年1月~2025年3月)

(出所)資源エネルギー庁:日本のエネルギー 2024年度版(2025年3月)

燃料費と再エネ賦課金の読み方:東京電力エナジーパートナーのケース

電気料金の高騰・高止まりについて、検証してみる。図2は、東電系小売電気事業者である東京電力エナジーパートナー(東電EP)」の、「再エネ賦課金」「燃料費調整費」「調整費用を除く燃料費」の推移について、電力会社の原価算定資料・販売電力量等を基に、2020年度~2024年度の標準家庭(使用量400kWh/月)に課された年間費用を試算したものである。燃料費については、燃料費調整額として請求書上に表れる金額のみならず、料金原価に組み込まれている燃料費全体を推計により可視化したものであり、実際の請求額を示すものではない。左図は、料金を引き下げるために導入された補助金を織り込むケース、右図は織り込まない・実態を反映するケースである。

「再エネ賦課金」は、経済産業省が公表する再エネ賦課金単価を基に計算しており、全国で同一水準となる。燃料費は、東電EPの料金約款および燃料費調整単価、公表原価資料を基に、試算できるが、燃料調整費は再エネ賦課金と同じく「別建てで表示される項目」として可視化されている(請求書上の表記は「燃料費調整額」)。「燃料調整費用を除く燃料費」は基本料金に織り込まれており、料金請求書には現れない。

図2.電気料金を構成する燃料費、再エネ賦課金の推移①
(東電小売り、400kWh/月の標準家庭モデル、2020~2024年) 

  (出所)資源エネルギー庁および東京電力エネジパートナー公表データより作成

料金変動として可視化される主因は燃料費調整費

再エネ賦課金は、年間1.5万円前後で安定的に推移している。2023年は0.7万円に減少するが、賦課金はFIT価格と市場価格の差を補填する仕組みであり、2023年は市場価格が高騰し差が縮小したからである。このように賦課金は国際燃料価格の変動を緩和する役割を担う。

一方、燃料費調整費は、年間の変動が大きい。2020年0.2万円、2021年0.7万円から2022年には3.4万円/年と急増する。しかし、補助金支給の影響により、2023年以降は減少する(左図)。補助金は、燃料調整費を減額する形で支給される。しかし、補助金なしの場合は高水準が続くが、これは本来のコストである(右図)。補助金は燃料費そのものを減らしたのではなく、燃料費調整額として可視化される負担の一部を肩代わりしたに過ぎない。

燃料費調整費以外の主たる燃料費は、タイムラグをもって影響を受ける。燃料費調整費は数カ月遅れで段階的に反映されるため、調整費に反映されなかった燃料価格変動は、時間をかけて基準料金(=調整費を除く部分)に洗い替え的に取り込まれていく構造になっている。

以上より、補助金込みで評価しても、燃料費は変動が大きく、家計が実際に支払っている総額としては再エネ賦課金よりもかなり大きいことが分かる(特に右図)。

見える負担、見えない国民負担:再エネ賦課金論争の盲点/再エネ費用は安定しており、変動を緩和する「保険」の役割

「燃料費調整費」は、電気料金に含まれる火力発電の燃料費の一部に過ぎない点には注意が必要である。燃料費調整額として可視化されるのは、燃料価格の変動分であり、火力発電に要する燃料費の大半は、すでに基準となる電気料金に織り込まれている。図2において、調整費を除く燃料費(緑色)が見えない場合、印象は全く異なる。

行動経済学では、人は料金明細として可視化された費用を過大に評価し、基準料金に埋め込まれた費用を過小評価する傾向があることが知られている。このため、再エネ賦課金や燃料費調整額のような「見えるコスト」が、実際以上に高く感じられやすい。

改めて図2右図が示す通り、燃料費が大きく変動する一方で、再エネ賦課金は安定している。再エネ賦課金は、国際燃料価格の急変という、個々の需要家では回避できないリスクに対する保険と言える。再エネは燃料費がゼロなのである。燃料費が急増した2023年には賦課金は減少し緩和に寄与している。

東電EPと全国平均との対比:東電は燃料費は高いが変動は緩やか

図3は、図2右図とそれに対応する全国平均とを比較するものである。左図が東電EPで右図が全国平均である。全国平均電気料金とは、旧一般電気事業者および実際に家庭用電力を販売している小売電気事業者の料金を、販売電力量で加重平均したものである。新電力も制度上は含まれるが、販売規模が小さく影響は限定的である。東電EPの燃料費は、火力発電の割合が大きく全国平均と比べ水準は高い。一方、長期契約を中心とした調達構造および料金制度の特性により、年次ベースの変動幅は相対的に緩やかである。

図3.電気料金を構成する燃料費、再エネ賦課金の推移②
(東電と全国平均の比較、補助金含み、2020~2024年)

(出所)資源エネルギー庁・電力各社公表データより作成  

再エネ賦課金停止論をどう評価すべきか

なお、保守系政党は、再エネ賦課金は廃止・停止すべきと主張している。国民民主党は、物価高対策として賦課金負担を一時停止すべきとの主張で、法案も提出している。これは、補助金の目的が「燃料価格暴騰の緩和という緊急措置」から物価対策として「電力需要期の負担緩和」へと変化する中で、再エネ賦課金負担も軽減が必要、との主張と理解できる。電力需要者は、再エネ賦課金を含む料金制請求書の総額を見ているのであり、考え方として理解できる。一方、参政党、日本保守党の再エネ賦課金廃止は、FIT等の支援措置自体の廃止を意図していると考えられる。

終わりに 電気料金表示が問いかける「認知の偏り」

電気料金表示(図2)から、電気料金に占める燃料費の割合が大きく、これが高騰の主因であることが分かる。また、問いかけているのは「どのコストを見えるように設計してきたのか」という問題である。火力発電の燃料費は、より大きな額が、より見えにくい形で支払われてきた。再エネ賦課金は、比較的少額であっても、意図的に「見える形」で徴収されている。

この違いを無視したまま、「見えるコスト」だけを取り上げて再エネを批判することは、保守が本来重視してきた現実主義や責任ある政策判断と整合的だろうか。図2は、再エネの是非や優劣を決める図ではない。むしろ、電気料金をめぐる議論が、どれほど認知の偏りに左右されているかを静かに示す図なのである。

電気料金問題の本質は、再エネか火力かではなく、国民に見える形で説明されているコストと、制度の内側に隠れたまま議論されないコストの乖離にある。

山家公雄  略歴

1956年山形県生まれ。1980年東京大学経済学部卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。電力、物流、鉄鋼業界等の担当を経て環境・エネルギー部次長、調査部審議役等を歴任。2009年エネルギー戦略研究所㈱取締役研究所長、2012年山形県総合エネルギー政策顧問、2014年京都大学特任教授、2025年(一財)海外投融資情報財団シニアフェローに就任。2023年10月より現職。主な著作に「再生可能エネルギーの真実」、「日本の電力改革・再エネ主力化をどう実現する」「テキサスの電力市場・電力システム」などがある。

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